「ドゥアン・ドゥアン・ナ・チェンマイ」
草木染木綿コレクション展
期間:2011年5月11日(水)〜2011年5月16日(月)
「ドゥアン・ドゥアン・ナ・チェンマイ」草木染木綿コレクション展に寄せて
「バンライ・バンガム布を思い浮かべば、チェンマイの竹林の中での佇まいを思い描くことができます。
また、タイの手織りの布は織りに携わる人の暮らしと表情を思い出させてくれます。

私たちが十数年前に「アジアの手仕事展」という場で出会った、その工房の長閑な時間の流れから作られた風景を忘れることができません。
さらに、そこから十年以上も前の事になりますがタイのチェンマイに「ファイ・ドゥアン・ドゥアン」という一軒の民家がありました。
そこで織られていた手織りの木綿こそが、その流れを作り出したはじまりでした。
三十年前、もう想像すら難しいタイの田舎の風景の中に彼女の工房があり、たくさんの女性たちがその土地の暮らしの中で作られた機器を使用して綿の布を織っていました。
その色づかいの素朴さと美しさは目を見張るものがあり、実にタイの田舎の暮らしの豊かさそのものを表現していました。
経済の成長が人の暮らしの豊かさとは何の関係もないという、生きることの豊かさを彼女たちの織る布は表現していました。
すべての工程をゆっくりと、おしゃべりをしながら草を煮炊き、木を煮込む。
どうして?どうして?というような疑問すら覚える深い色が出来上がり綿に浸みこまされる。
お茶を飲みココナツ菓子で笑いあう。
そしてひと時また織り始める。
そんな原風景の中から人技とは思えぬような絣柄が作り出され、織りあがった布は芸術なんかと無関係な、比較のない美しさが織り込まれていました。
町の小さな店からトラックで4〜50分以上もする田舎に案内された林の中にある掘立小屋の工房には、生きる楽しさと働く喜びにむせかえっていたのが、もう一昔も前になるのですが鮮やかに思い返される光景になっています。」


こんな手紙を書いたのがドゥアン・ドゥアンの布の展示の試みの動機だった。
更にはチェンマイの親しい友人にそのことを話すと、驚いたことにドゥアン・ドゥアンの布の綺麗さを誰よりもよく知っていて、ドゥアン・ドゥアン・ナ・チェンマイさんの知り合いでもあった。
興奮が冷めぬまに、たくさんの古い布をリュックに背負い彼女の家を訪れ、ラ−ナタイ時代の名前の名字を持つ彼女に会った。
「日本の方がタイでももうほとんど見当たらない布をたくさん持って訪れてくれましたよ」と古い王朝の名残のする部屋で彼女の布を広げ、84歳の老夫人の美しい肢体と笑顔がタイの同居人たちに笑顔で語りかける。
このピンクとブルーの絣の布がとてもお気に入りのよう。
それを私の友人がデザインして一着のシン(スカート)を作り彼女にプレゼントをすることになる。
人生のめぐり合わせとは実にダイナミックで愉快だ。
三十年を経て初めて巡り合ったドゥアン・ドゥアン・ナ・チェンマイ女史との出会いが、私たちの人生に実に不思議な喜びと時めきを与えてくれた。
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